
今回セビリアを再訪した目的の一つに、自分がタイル作家となった今スペインタイルの歴史や芸術性を学び直すと共に、改めて現地のタイル産業がこの20年でどのように変化したのかを自分の目で確かめたいという思いがありました。
街中の全てがタイル博物館であると言っても過言ではないこの街には、歴史ある素晴らしいタイルアート空間が広がっています。想像以上にハイレベルな、多くの芸術家たちが残した数々の遺産には想像を超える発見や驚きがあり、実物のタイルの美しさをこの地で実際に触れることには大きな価値があると感じます。アフリカの真上に位置するこの国では、夏の暑さを少しでも涼しく過ごすためにタイルは人々の生活には欠かせないアイテムであり、かつ室内や屋外でも使用できるタイルの特質から実用性をも兼ね備えた古くからアンダルシア地方に根付いてきた伝統的な芸術作品の一つでした。

セビリアを含むアンダルシア地方でのタイルの歴史はとても古く、8世紀のイスラム教徒によるイベリア半島の征服に伴いタイル文化の普及が始まりました。化粧タイルの使用が最盛期を迎えたのは13世紀から15世紀の間、それから長い長い時代と共に様々な装飾方法や様式、新しい技術を取り入れながら変遷を経て今に至っています。

タイルの絵柄には、その時代時代を生きた人々の暮らしぶりや宗教的なものが多く含まれます。多くの上流階級や有力なブルジョア階級たちが自分達の富を化粧タイルで紋章(エンブレム)を描き、それらを自宅に飾ることも多くありました。それらのエンブレムタイルは、現在もセビリアの古文書館やレアル・アルカサルの出入り口、カプチン会修道院などで保存され見ることができます。
実際に私が撮り溜めた2025年現在のセビリアのタイル画像と共に、ご紹介しています。