スペインに広まったタイルと歴史のお話   後編

ポルトガルの離宮にもタイルを施すように
なったのは、15世紀末。スペインを訪れた
ポルトガル王がスペインのアルハンブラ宮殿
に魅せられたのがきっかけと言われています。
それを機に、ポルトガルでもタイルの製造が
盛んになっていきす 。
16世紀には幾何学模様などの特徴的なタイル
を多く輸入し、宮殿だけでなく教会や修道院の
壁の装飾にタイルが多く用いられました。

タイルの装飾技術には、幾つか方法があります。
西美里愛の作品でも多く用いているクエルダ・
セカの技術は、かつてオイルを染み込ませた綱
(Cuerda)でデザインを描き、そこに水で溶いた
釉薬を流し込んでオイルと釉薬を弾かせて絵付け
をするものです。油を含んだ綱は、その後の焼成
で焼けて消えてしまいます。溶けてガラス質へと
変化した釉薬のみが高温焼成後に残ってタイル表
面を覆う、という原理です。現在ではこのCuerda
の代わりに、先端の細い特殊な筆で絵付けを行っ
ています。

その他、表面全体に釉掛けしたタイルの上に絵を
描く水彩画に似たテクニックのソブレ・バーニョ
技法、 石膏型に粘土を嵌め込んで凹凸のタイル
を作るアリスタタイルなど...他にも沢山の技法
があります。
多くの職人達が、これらの様々な技術を駆使して
人物や動植物、歴史的な古典神話や宗教に纏わる
様々なモチーフを描いて今日までタイルを芸術性
の高いものへと変えていきました。

当時の人々の暮らしや風習、職業などにユーモア
を込め、風刺的にタイルへ描くことも多くなりま
した。
彩りも増し、タイルのイメージも次第に明るく変
化していきます。中国や日本、オランダの作品の
影響で青一色のタイルが流行する時期もありまし
が、18〜19世紀にはタイルの絵付けは一層多彩色
で鮮やかなものが好まれる様になります。
タイルは室内装飾だけではなく、建物全体の外壁を
華やかに飾る役割をも果たすようになったのです。

一般住宅においても、人々は自宅の壁などを
タイルで覆いました。タイルを外壁に施工する
ことにより、豪雨や湿度から家を守り、暑い夏
にはひんやりと涼しく過ごすことができるから
です。
住宅はもちろん、街の通りの標識や看板・店舗
や鉄道の駅などにもタイルが貼られる様になり、
タイルの需要が急速に増え生産は盛んになって
いきました。

機械生産された安価なタイルが大量に作られる中、
それに対抗する様にタイル職人たちは更に腕を磨
いて手作りの素晴らしいタイルを作り続けていき
ます。
スペインの人々にとってタイルは、その成り立ち
と共に生きてきた長い長い歴史があり、そして彼
らの生活に彩りを与えるためには欠かせないもの
となっていったのです。
ですから、タイルはみんなの関心の的でもありま
した。
今日では手作りの温かみを持った素晴らしい芸術
品として常に次世代に受け継がれ、その質が正に
職人たちの技術の高さを示しているのです。

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